遅刻の取り扱い① ~未払残業代請求,未払給与請求に関連して

未払い残業代や未払給与に関するご相談の中で,
問題になる項目の一つとして,
遅刻の取り扱いが挙げられます。

給与や残業代を請求する労働者の立場でも,
労働者を雇用する会社側の立場でも,
労働者が遅刻した場合の取り扱いについて,
法的にはどうなっているのか,
正確に理解されていない方も多いと思います。

遅刻した時間に関して給料を払う必要があるのか,
遅刻を繰り返すことで解雇できるのか,
人身事故等で電車が遅れた場合と寝坊の場合では異なるのか等,
法的にも問題となる場面が多いです。
(もちろん,遅刻をしないということが第一ですが)

そこで,今回と次回,2回にわたって,
遅刻の問題について考えてみたいと思います。
なお,今回は遅刻と賃金との原則論を中心に,
ご説明したいと思います。

1.ノーワーク・ノーペイの原則

労働者は,会社に対して賃金の支払いを求める権利を持っていますが,
その権利は,労働をしたことそれ自体の見返りとして与えられるものです。

そこで,労働がなされない場合には,
その見返りである賃金も支払われないのが原則です。
つまり,労働者には,働いていない時間分の賃金支払いを求める権利がない,
これを,ノーワーク・ノーペイの原則といいます。

そうすると,遅刻をした場合,その時間分の賃金について,
労働者は支払いを受けることができないのが原則です。

とはいえ,ノーワーク・ノーペイの原則は,
あくまで論理的な原則に過ぎませんので,
就業規則等の会社の取り決めとして,
賃金を控除しないといった取り扱いをすることは,
もちろん労働者に有利なものとして有効,適法です。
会社側からすれば,そのような取り決めをした場合,
労働者と会社とを拘束することになりますので,
会社は賃金を控除する(支払わない)という扱いはできないことになります。

また,取り決めとして就業規則等に定めていなくても,
会社の慣行として,
あるいは当該労働者との関係で,
遅刻について賃金控除の対象としない取り扱いを続けてきた場合,
当該労働者の期待は法的に保護すべきものとして,
賃金控除(不払い)が許されない場合もあるでしょう。

2.公共交通機関遅延の場合の扱い

ここで,ひとつ具体例について考えてみましょう。
例えば,悪天候や人身事故等により公共交通機関が遅延した場合のように,
労働者の責任のない理由で遅刻してしまったとき,
労働者は定時に出社した場合と同様の賃金を請求することができるでしょうか。

この場合でも,ノーワーク・ノーペイの原則が適用されます。
つまり,遅刻した分の賃金を控除したとしても会社に何ら問題はありません。
原則として労働者はそれに対して文句をいえません。

しかし,多くの会社が労働者のために,
就業規則や慣行により,
労働者にとって有利な条件で取り扱いをしており,
それも労働者に有利な条件であれば適法となるでしょう。

例えば,
「公共交通機関遅延の場合の遅刻は,年に3度までは遅刻と扱わず,
それ以降は遅刻と扱い賃金を控除する」
「公共交通機関遅延の場合,15分までの遅刻は賃金控除の対象としない」

このように,遅刻と賃金に関しては,
ノーワーク・ノーペイの原則を出発点に,
労働者保護の観点から,
就業規則や慣行により,
会社によって,様々な決まり事,取り扱いのもと運用されており,
遅刻の分の給料がもらえるかどうか等の法的問題については,
各会社の就業規則や慣行によって評価が異なりますので,
お困りの際には専門の弁護士に相談することをオススメ致します。

では,次回も遅刻に関して,
ご説明させていただきたいと思います。

伊倉 吉宣
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